束の間

束の間の出来事

風の位置がいつもより高い。
森の頂点に風が吹いている。

そんなときは、人間の位置にはその余波の風が来ているだけに過ぎず、「今日はそよ風が気持ちよい」なんて軽率に言ってはいけない気がする。
私たちのためではなく、宇宙の動作の一つとして何かをしている気がするから。

風のうたもいつもより静かだ。
秘かに何かを語り合うようにうたっている。
風の会議がおこなわれているのかもしれない。


まっさらな蒼い空と、ルイスバラガンのマゼンタ色がとてもよく映えそうな太陽。
太陽はメラメラと笑い、宇宙の輝きを放っている。
光がいつもより強い。
真夏でもないのに、穴があくのではないかと思うほど全てのものを強く照らしている。


鳥たちもいつもより目立った行動をとっている。
木から木へと飛び回っては立ち止まる。

木々は緑色を濃く発していて、その緑を作るために沢山の色味の要素を含んでいるのがいつも以上によりはっきりとわかる。
生命体も非常に興味深いかたちをつくっている。


いつもと同じ景色を見ているのに、情景が異なる。

天変地異でも起きているかのように見るもの見るものが全て新しい。

新しく生まれ変わったかのような、新しい感覚。

そんな時間をちょっとだけすごす。